私たちは「冬」だけでなく、猛暑や異常気象、それに伴う自然災害や農作物、水産物への影響など、すでに日々の暮らしにおいても「気候危機」に直面しています。さらなる気温上昇による「最悪のシナリオ」を回避するため、パリ協定で合意された「1.5度目標」、そして「2050年カーボンニュートラル」を目指して世界中が取り組みを進めているなか、私たちが暮らす日本の現状は?とくにエネルギー分野におけるカーボンニュートラルの現状と課題、そして私たち市民ができることについて考えてみましょう。

I. 世界が目指す方向

“1.5度目標”の達成に向けて、
世界が目指すのは2050年カーボンニュートラル

パリ協定で合意された「1.5度目標」( 地球気温上昇を1.5度以下に抑える)を達成するために、150の国や地域で「2050年カーボンニュートラル」を掲げ様々な取り組みが行われています。その中間目標として、IPCCは「2035年までに温室効果ガス排出量を2019年比で60%*削減」(2023年3月)することを求め、2022年にドイツで開催されたG7サミットでは「2035年までに電力部門の完全または大部分(predominantly)の脱炭素化」が共同声明に盛り込まれました。

Ⅱ. 日本のエネルギー政策 世界とのギャップと課題

削減目標や再エネ比率は控えめな目標設定

2020年に「2050年ゼロカーボン」を実現することを宣言した日本のエネルギー政策に目を向けてみましょう。

2021年に表明した日本の温室効果ガス排出削減目標(NDC)は2030年までに”46%減(2013年比)”としています。これを実現するため、第6次エネルギー基本計画では、2030 年度の電源構成(発電電力量)における再エネの比率を36〜38%と設定していますが、この水準は各国の動向や、国際機関等が公表している世界的な見通しと比べても低いとされています*1。

日本以外の G7 加盟国の再エネに関する目標は、ドイツが 2030 年に少なくとも 80%、イタリアが 2030年に 70-72%という導入目標を掲げ、カナダは現時点で既に 76%を供給されています。英国は 2035 年脱炭素化をどのような電源で行うか明確にしていませんが、洋上風力発電開発が大規模に進む一方で、現在 11基稼働している原子炉のうち 10 基は 2028 年までに廃止の予定。米国・エネルギー省が 2021 年に公表した研究では、これまでの実績をもとに、2035 年の電力のうち 80%以上が自然エネルギーになる二つのシナリオを公表しているます。フランス以外の5か国においては2035年に⾃然エネルギーによって電⼒の70%、80%程度を供給すること⽬標として定めているか、あるいはそうした⽅向へ施策が進められていることになります(フランスは 2022 年時点で原⼦⼒発電(62%)と⾃然エネルギー発電(26%)を合わせ、脱炭素電源が 88%を占めています)*2。

*1 Climate Integrate 「2035年電力システムの政策転換
*2 自然エネルギー財団「2035年エネルギーミックスへの提言(第1版)

このままでは石炭火力や原発依存を続けることに・・・

政府は「産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する」戦略として、「グリーントランスフォーメーション(GX)」を推進し、 今後10年間に150兆円超の官民投資を実現することを岸田首相は表明しています。しかし、GXが推進する技術の中には、さまざまな課題が指摘されている、次世代原子力、水素・アンモニア混焼、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)も含まれており、パリ協定で定めた「1.5度目標」や、「電力部門を2035年までに脱炭素化する」というG7合意などと整合しないと指摘されています。

POW JAPANではいくつかの研究機関の報告書などから、日本のエネルギー政策の課題として「再生可能エネルギーの導入」「石炭火力の段階的廃止」「原発依存を低減」の3つにまとめました。

Ⅲ. 日本が目指す目標値

エネルギー政策には、意欲的な目標設定が必要

1.5度目標を達成するためには、2035年までの温室効果ガス削減目標および再エネ導入について意欲的な目標を再設定する必要があること、またその実現可能性があることがすでにいくつかの報告書で発表されています*1。

Ⅳ. 日本のエネルギー政策と市民運動

市民が「声」をあげる

気候危機の解決に向けて、「1.5度目標」そして「2050カーボンニュートラル」を達成するために、とくに日本においてはエネルギー政策の「目標の強化」と「計画の見直し」が急務です。これらの目標や計画が示される「エネルギー基本計画」の改訂が2024年に、「NDC」の見直しが数年以内に行われる予定で、その議論がまもなく始まろうとしています。

私たち市民はどうしたら、国の政策を目指すべき姿へと後押しできるのか。それは途方もなく遠く、大きな話に感じるかもしれません。でも、黙っているだけでは現状維持に「YES」と言っているも同然です。私たち「声をあげる」ことができる。一人ひとりの声は小さくても、その声が集まれば「大きな声」となってムーブメントをつくることができる。POW JAPANは市民団体「ワタシのミライ」に賛同して、国内で活動する環境団体や市民団体、若者たちと連携して、より大きな「うねり」を起こしていきます。

ACT NOW
いますぐ行動する

ホンキの気候変動対策を求める署名スタート
今すぐに省エネを進め、再エネを増やす本気の気候変動対策を始めるよう、政府(総理、経産、環境各大臣)に求める署名がはじまりました。市民が動けば、政治は変わります。選挙で女性が投票できるのも、自由に仕事を選べるのも、それを求めて声をあげた人たちがいたからでした。まずは意思表示からはじめましょう。再エネを増やして本気の気候対策を求め、安全で暮らしやすい未来への一歩を一緒に踏み出しましょう。

ワタシのミライ 2024 気候変動を止めるために今年できること

様々な活動を展開する幅広い市民から、「エネルギー基本計画」に求めることや、今できることを共有することを目的としたイベントが開催されます。POW JAPANから事務局長の髙田翔太郎が登壇いたします!

日時:2024年1月17日(水)16-18時 +交流会(18-19時)
場所:東京都新宿区歌舞伎町1-1-15 東信同和ビル7階+オンライン
主催:再エネ100%と公正な社会をめざす「ワタシのミライ」
参加費:無料
申し込み:現地参加オンライン参加

これまでのアクション

ワタシのミライ
NO NUKES & NO FOSSILE
再エネ100%と公正な社会を目指して 

2023年9月18日、東京の代々木公園にて、再エネ100%と公正な社会をめざすイベント&パレード「ワタシのミライ No Nukes & No Fossil」が開催され、イベント・パレードへの参加はのべ8,000人。POW JAPANはアウトドアコミュニティの仲間たちに声をかけ、多様で愉快な仲間たちと一緒にパレードへ参加しました。

院内集会「こんなにおかしいGX法!ワタシのミライはどこへ?」

2023年5月23日 「ワタシのミライ」が主催する、GX法案に声を上げる院内集会「こんなにおかしいGX法!ワタシのミライはどこへ?」&アクションに参加。代表理事の小松吾郎がスノーコミュニティを代表してスピーチいたしました。