豊かな暮らしとフィールドでの遊び、仕事の理想的なバランスを目指して

豊かな暮らしとフィールドでの遊び、 仕事の理想的なバランスを目指して Lisa Obinata 「私たちの愛する冬を気候変動から守り、未来につなぐ」という理念の下、2018年に活動をスタートした非営利の環境団体POW JAPAN。現在、5人の事務局メンバーを中心に、スノーコミュニティ発の脱炭素社会の実現というビジョンに向かって、さまざまな取り組みを行っている。発足3年目にして、数々のミッションをクリアしてきた彼らだが、もともと環境問題の専門家でもなければ、組織を運営してきた経歴もない。共通するのはスキー、スノーボードをこよなく愛し、自然に囲まれた場所で暮らしているということ。それぞれのライフスタイルと調和したPOW JAPANでの“働き方”を、3人の事務局メンバーが語り合う。 左からPOW JAPAN事務局の脊戸柳武彦、髙田翔太郎、鈴木瞳 POW JAPANに関わるキッカケ ー まず、みなさんがPOW JAPANに関わることになった経緯を教えてください。 高田翔太郎(以下、翔太郎):POW JAPANは2018年にスノーボーダーの小松吾郎さんを中心に発足したのですが、設立準備の段階で、さまざまな環境団体の支援をしているパタゴニア社も関わっていたそうです。僕は2016年までパタゴニアで働き、1年半ニュージーランドを旅して大町(長野県)に帰ってきたころ、パタゴニア環境部を通じてPOW JAPAN設立の話を聞いて。POW Internationalの活動については知っていたし、ちょうど会社に所属して働くつもりもなく、長い旅を通じて地域のことや環境のことに関わりたい気持ちが芽生えていたので、「これは何かの縁だな」と思い、立ち上げメンバーに加わることになりました。 脊戸柳武彦(以下、セト):僕がPOWを知ったキッカケは2011年2月にジェレミー・ジョーンズがフィルムの撮影で白馬に来たときに、登り口でばったり会って一緒に写真を撮ってもらったことがありました。その後彼の作品を頻繁に見るようになり、ジェレミーが立ち上げたPOWの活動も意識するようになったんです。 当時、僕はサラリーマンで、毎週末スキーをするために宇都宮(栃木県)から白馬に通っていました。パタゴニア白馬にも通うようになり、翔太郎くんと知り合ったんです。彼との話は面白くて、一緒にサーフィンに行ったり、刺激を受けました。 のちに会社を辞めて、白馬に家をセルフビルドで建て始めたころ、翔太郎くんと再会しPOW JAPANが立ち上がったことを知りました。 それまでもビーチクリーンとかは日常的にやっていたけれど、ひとりでやっていても変わらないよな、という気持ちがありました。滑り手による環境団体ができて、アクションを広める活動ができるのは面白い、と思い、2019年5月のシンポジウムにボランティアで参加したのがキッカケです。 鈴木瞳(以下、瞳):私は2019年の冬にPOW JAPANに入りました。それまでは神奈川に住んでいたんですけど、いつか自然に近いところで暮らしたいなという思いがありました。そんなときに「POW JAPANで人を探しているよ」という情報が入り、すぐにピンときて翔太郎さんに連絡を取りました。3日後くらいには大町で小松吾郎さん、由紀子さん(プロジェクトオーガナイザー、吾郎の妻)、翔太郎さんとお会いしてトントン拍子に決まったんです。その冬は、白馬の宿で居候させてもらいながらPOWでの仕事を始めました。 セトが活動へのきっかけとなった2019年5月のシンポジウム。右から2番目が小松吾郎(代表理事)、4番目が翔太郎 ー 立ち上がったばかりの団体で仕事の内容や勤務形態も、最初はイメージがつきにくかったのでは? 瞳:POWのことは知っていたけれど、実際何をやっているかはよくわかっていなかったですね。でも環境問題に対してシリアスに向き合う団体ではなく、スキー、スノーボードが好きだからこそ、冬や自然を守りたいというポジティブなムーブメントに強く共感しました。生活に多少の不安はありましたが、翔太郎さんには、住む場所もなんとかなるよって言われて、来てみれば確かに何とかなりましたし(笑)、POWでの働き方も、移住した安曇野(長野県)での暮らしもとても気に入っています。 セト:僕はPOWの仕事に携わるようになって、3年で完成予定の家作りが少し遅れていますが(笑)。今は直江津(新潟県上越市)の海の近くに家を借りていて、週4~5が直江津、週2~3が白馬という感じですね。POWの仕事はリモート中心でやらせてもらっています。 翔太郎:正直、始めた当初は環境団体の運営の仕方とか、POWで働く中身を具体的にイメージはできていなかったですね。その都度チャレンジしていく中で、徐々に掴めてきた感じです。みんなで学び実践しながら、今の形になっています。 週に1度、白馬のシェアオフィスをお借りして、進捗などを確認するミーティングを実施。それ以外は各自で作業を進めるのが基本のスタイル どんな仕事をしているのか ー POW JAPANの主な事業内容を教えてもらえますか? 瞳:大きく3つの軸があります。ひとつは、より多くの人たちに活動や気候変動問題について知ってもらい、仲間を増やしていくこと。ふたつ目は啓蒙活動や教育。学校やスキー場に対して、気候変動についての講習会を行っています。3つ目は脱炭素社会に向かって取り組んでいくこと。スキー場や自治体と連携し、どうやって脱炭素を目指していけるか、具体的に動くことです。 ー 5人のチームでの役割分担はどんな内容なのですか? 瞳:私のメインの役割は発信。WEBやSNSを中心に、様々な情報を整理して伝えていく仕事です。