再エネ導入セミナー
〜スキー場の実践例から学ぶ、導入のリアルと第一歩〜
-開催レポート・前編-
再エネ導入の第一歩目は、本記事をお読みいただくところからスタート!
気候変動の影響が深刻化する今、スキー場にとって、再生可能エネルギーの導入は、重要な気候アクションの一つであり、経営の持続性のために必要な課題でもあります。
一方で、「どこからはじめれば?」「電力会社はどう選ぶ?」など、日常の業務も多忙な中で、実際に始めるための疑問や不安の声も多く聞きます。
そこで今回、サステナブル・リゾート・アライアンス(以下、SRA)加盟スキー場やパートナー企業の皆さんに向けて、再エネ導入をテーマとしたオンラインセミナーを開催しました。
登壇してくださったのは、再エネ100%実践支援を行う再エネ100宣言 RE Action(アールイーアクション、以下、RE Action)の金子さん、実際に再エネ導入を進めている、かたしな高原スキー場の澤さんと戸隠スキー場の戸谷さんの3名です。
実際の導入プロセスや、費用に関するリアルなお話を、惜しみなくご共有いただきました。

本記事は、
①前編 「スキー場の再エネ導入ってどうやるの?」に応えるセミナーの内容をご紹介!
②後編 「実際の再エネ導入のリアル」なパネルディスカッション
の2編で構成されています。
最初に、RE Actionの金子さんより、具体的な再エネ導入のプロセスについてお話しいただきました。金子さんのお話しから、内容を抜粋してご紹介します。
再エネ導入が必要な背景「地球沸騰化」
2023年と2024年は世界的に史上最も暑い年に、2025年6月も、日本史上最も暑い6月となりました。地球温暖化を通り越して、「地球沸騰化」と言われています。
気象庁の発表によると、6月の平均気温平年差は、北日本で+3.2度、東日本で+2.3度、西日本で+1.8度となりました。気温上昇を1.5度以内におさえたい中、今世紀末までに最大で3.1度気温上昇するという見通しも発表されています。
再エネ化は世界的な潮流
こうした状況を受けて、諸外国では再エネ導入はもはや当たり前。国際エネルギー機関の予測では、2028年には全世界の電力量の再エネ率は4割以上になると予測されています。一方、日本だと再エネ率はまだ2割少しという段階。日本の状況だけをみていると、海外の感覚とズレるところもあります。
海外からのお客様が多いスキー場では、ぜひ再エネ導入を積極的に進めていただきたいです。
再エネ電力の調達方法は大きく3種類
「再エネ導入」には、大きく分けて以下の3種類の導入の方法があります。

①太陽光発電導入の事例
自家消費型の太陽光発電は、導入のハードルはありますが、経済性の高さが利点です。スキー場での導入に関する疑問を、事例を用いながらご紹介します。
Q.雪があっても発電できるの?
A.雪国に適した太陽光パネルの設置方法があります
屋根上に太陽光パネルを設置:青森県民生活協同組合おいらせ店の事例
店舗の屋根上に設置した太陽光発電施設により、店の消費電力の約30%を太陽光により発電し、約165tのCO2の排出を削減。比較的雪の少ない地域ではありますが、仮にもっと雪のある地域でも、太陽光パネルの傾斜を強くするなどにより設置できる可能性があります。また、冬の発電は諦めて、春夏秋のみの稼働でも元が取れるくらい、太陽光パネルも安くなってきています。
(画像引用:RE Action)
垂直型の太陽光パネル:石川県白山市「吉田酒造店」の事例
屋根への設置ではなく、縦向きに設置する垂直型のソーラーパネルもあります。垂直型の場合、積雪が問題になりづらく、地面に積もった雪の反射で発電量が増えることもあります。

(画像引用: 自然エネルギー財団)
Q. 敷地面積が限られる。屋根上以外の太陽光パネルの設置場所はないか?
A.敷地を有効活用できるアイデアもあります。
ソーラーカーポート:岐阜県大垣市の株式会社艶金の事例。
カーポートの屋根に太陽光パネルを設置した、ソーラーカーポート。架台を作るコストはかかりますが、国からの1/3の補助金などもあります。
また、屋根付きの駐車場となったことで、利用者の方からの評判もよいそうです。
(画像引用:RE Action)
Q. シーズン中とそれ以外の時期で使用電力量に大きな差があるスキー場では、どのように導入を考えたら良いですか?
A. コスト面で最も理想的なのは、発電した電気を自分たちで無駄なく使い切ることです。
そのため、季節による使用電力量の差がある場合は、一番少ない使用量に合わせて太陽光パネルの容量を設計するのが経済的です。
Q. 太陽光パネルで全電力をまかなうことは現実的には難しいと思いますが…。
A. 太陽光で発電した電力を最大限使って、足りない分を小売電力事業者から買うという仕組みになります。曇りの日は購入量が増えてしまいますが、晴れの日は外部から買う電力が減る、という形です。
Q. 設備投資と考えた場合経済性が高いと言えますか?
A. はい。導入方法にもよりますが、たとえば自己所有の場合、初期投資の回収期間は今では10年を切るところも出てきています。中には5〜6年で回収できるケースも。
パネル自体は20年以上は使えるので、例えば1000万円の初期投資をして10年で回収できた場合、その後の10年は電力コストが実質ゼロになる、というのが基本的な考え方です。
Q. 初期投資の回収期間に差が出るのはなぜ?
A. 一つは、お願いする事業者さんによる違いです。相見積もりをして、よい事業者さんに出会えれば、比較的コストをおさえて導入できることがあります。
二つ目には、特に製造業の方々は、ある程度自分たちで手を動かせる部分が多く、見積もりを取ったり、手配をしたり、保守の仕組みを考えたりといったことに慣れていて、その分コストを下げやすいです。
最後に、設置規模です。面積が大きければ大きいほど効率も上がりますし、結果として投資回収期間も短くなりやすいです。
まとめ:自家消費型の太陽光発電は、導入ハードルがややありますが、最も経済性の高い再エネ導入方法です。中長期の投資が可能、というスキー場では、ぜひ検討してみてください。
②再エネ電力メニューの契約
次に、スキー場の電力契約を再エネメニューに切り替える形での再エネ導入方法についてご説明します。
電力契約においては、「低圧メニュー」と「高圧・特別高圧メニュー」があります。

「低圧メニュー」と「高圧・特別高圧メニュー」の比較
低圧メニューは、各電力会社のウェブサイト等で基本料金や単価が公表されており、いつでも申込・切り替えが可能。低圧メニューの中にも様々なメニューがあり、「再エネ100%メニュー」なども用意されています。
高圧メニューは完全なオーダーメイドで、1年〜長いもので3年超の契約になります。高圧メニューを導入する場合は、まずは見積もり取得から始まります。
これまで1度も相見積もりを取ったことがない方は、再エネに切り替えて、かつ電気代が下がった事例もあるので、チャンスと思ってぜひやってみてください。
- はじめ方:まずは見積もり
- 用意するもの:12ヶ月分の電力使用量を準備し、希望を伝える。
- 高圧メニューのポイント:オーダーメイドのため、予算にあった自由な再エネ率の設定などが可能。再エネ種類や地域指定なども可能。土日に限定して電力単価が安いプランなどもあるかもしれないので、要望を細かく希望を伝えて見積もりをとってみてください。

いわゆる新電力でも、災害や停電時などの対応は変わらないので、この点は安心して見直しいただいて大丈夫です。
まとめ:再エネ電力メニューへの契約切り替えにより、電気代が下がった事例も。まずは相見積もりをぜひとってみてください。
③再エネ証書の購入
最後に、再エネ証書の購入は、最も簡単に再エネ導入できる方法です。
メリット
- 既存の電気供給契約を変えなくて良い
- 好きな期間、好きな量を購入できる
例えば、、「メインの施設のみ再エネ化」「大会など特定のイベントのみ再エネ化」から始めることもできる - 手続きも非常に簡単。購入代行事業者に依頼するだけ。
- どの都道府県で発電された再エネかも指定可能。
購入代行事業者に依頼するため、購入量に応じて手数料が変わります。
たとえば、イベント時だけ少量購入する、というケースだと、だいたい1kWhあたり2、3円くらいから、一方で、大量にまとめて購入する場合は、例えばその数分の一程度に単価が下がることもあります。普通の電気代にプラスして5%くらい、というのが1つの目安になります。
イベント期間中少しだけのようなケースであれば、数万円くらいから始められます。
再エネ証書購入をしたいという場合も、まずは見積もりから初めてみてください。
まとめ:再エネ証書の購入は一番お手軽。まずはお試しでやってみたい!というスキー場は検討を。
前半のまとめ
再エネ導入の種類は大きく3つ。それぞれのスキー場にあった導入方法を見つけてみてください。後半では、実際に再エネ導入をしたスキー場から、そのリアルなお話をお聞きします。
スキー場での再エネ導入の検討へ
RE Actionにご参加いただくとロゴなどもご利用いただけます。スキー場個別のお問い合わせなどにも対応しています。
【RE Actionへのお問い合わせや、参加などのご相談先】
メール:reaction@saiene.jp
再エネ100宣言 RE Action事務局
金子さんご講演資料
資料のダウンロードは、POW Japanへお問い合わせください。
ご登壇者情報
再エネ100宣言RE Action
RE Actionは、企業、自治体、教育機関、医療機関等の団体が、使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示し、再エネ100%利用を促進する枠組みです。
ホームページ:https://saiene.jp/
393団体が参加(2025年6月時点)し、スキー場が多くある群馬県や長野県、新潟市などもアンバサダーとして応援してくれています。経営者の推進力が抜群の中小企業の参加者が多いので、皆さんうまくコストアップを回避しながら、再エネ100%を達成されています。
最新事例はウェブサイトでも公開しています。

かたしな高原スキー場
ホームページ:https://katashinakogen.co.jp/

戸隠スキー場
ホームページ:https://www.togakusi.com/ski/

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